能登舟漕ぎ唄(七尾市)
1 ハアー 殿まの 櫓を押す姿
早稲の出顔でサーようようと(ハアーソレコゲ)(以下はやしことば略)
2 ハアー押せ押せ船頭さんも舟子も
押せば港が近くなる
3 よい子の よい子の守りよ お抱きたいの守りともに
4 あいの朝なぎ 下りの夜なぎ 真風たばかち 昼になぐ
◆ その昔、石崎(七尾市)の漁師たちが、漁を終えて帰る途中、疲労を癒し、睡魔を防ぐために歌ったのだ言われている
◆ 一般に能登の民謡には、東北地方系が多いといわれているが、能登の内浦地方の漁師がうたう「舟漕ぎ唄」も岩手県の「南部牛追い唄」系に似ているともいわれている。また、村民たちのうたう「籾摺り唄」が海上へ持ち出されてともいわれており、能登の数多い民謡の中でもっとも味わいが深く、哀調を帯びている。鳳至郡穴水町や七尾市石崎町などで盛んにうたわれたという。漁師たちは、夜明けに漁を終えて帰る途中に疲労や 睡魔を払うため、互いに唄った。夜明けの凪いだ海上に櫓のきしむ特異な音色とよくマッチして情緒をかもし出す。
妻たちは夫の捕ってきた魚を売り歩く、このときにもこの唄をうたったという。
◆ 歌詞の一題目に「ハー 殿まの櫓を押す姿」とあるが、2・3題目の比べると字数3文字足らずのため、出だし「ハー」を伸ばして音程を合わせている。この文字足らずは「愛(いと)し」が抜けて伝わり唄われいるようだ。「愛し」入ることによってより哀愁のある唄となる。(2022/9地元七尾市石崎町の中西清一民謡研究家)