阿岸ヤレナー踊り唄(輪島市門前町地区)             採譜:松嶋庄次

 

1 ヤーレナーレナーここに過ぎにしその物語(アチョイチョイ)

  国は中国その名も高き武家の家老に(アチョイチョイ、以下はやしことば略)

2 ヤーレナーレナー家老に一人のせがれ  平井権八(ごんはち)直則こそは犬の 喧嘩を

3 ヤーレナーレナー喧嘩を遺恨となりて 同じ家中の本庄氏を討ちて立ち退き

4 ヤーレナーレナー立ち退き(あづま)を指して 下る道には桑名の渡し僅かばかりの

5 ヤーレナーレナーばかりの船賃故に あまた船頭に取り囲まれて既に危うき

6 ヤーレナーレナー危うきその折からに これを見兼ねて一人の旅人(りょじん)平井助けて

7 ヤーレナーレナー助けて我が家に連れる これは名に負う東海道にその名熊鷹

8 ヤーレナーレナー熊鷹山賊なるが それと権八夢にも知らずその(や)内には

9 ヤーレナーレナー内には美人がござる 名おば亀菊蕾の花よ 見れば見るほど

10      ヤーレナーレナー見るほどおとなしやかで その夜権八の居間へと忍びこれさ若様

 (以下88題まである)

 ◆ 輪島市門前町の阿岸地区では、昔から唄い始めが「ヤレナー」と唄う盆踊りが踊られている。その昔、盆踊りの盛んな阿岸地区では、お盆になると村人たちは、近辺の集落で踊り巡って最後に阿岸本誓寺境内で踊った。踊りは、おけさ・おわら・もじり・高砂の後、琵琶や講談等に出てくる口説き調民謡、平井権八小紫口説き、心中物語、鈴木主人、おぐりはんがん輝姫口説きと続き、最後に目蓮尊者の地獄巡りで納めたという。阿岸地区ではその口説き調の唄のうち、ヤーレナーと唄い始まる「平井権八小紫口説き」だけが継承されている。歌詞は、尻取り続きで88題まである。