阿岸の石場かち唄(輪島市門前町地区)               採譜 松嶋庄次

 

1 (アヨイショ)ヨイショ(アヨイショ)ヨイショ

  めでためでたの若松様よ(アヨイヨイ)

  枝も栄えて葉も茂る(ヨイヤ葉も茂るヤ 枝も栄えて葉も茂る

  (アヨイショ)ヨイショ(アヨイショ)ヨイショ

  (以下はやしことば略)

2 枝も栄えては葉も茂りゃ 鶴は繁盛と巣をかける

3 この()館はめでたい館 鶴がご門に巣をかける

4 鶴がご門になんと言うてかけた 末は繁盛というてかけた

5 今日は阿岸の郷まつりや 小菊桜も恋をする

6 亀の人足ぁ八人揃うた それで上がらにゃ よだがりじゃ

7 能登の門前ないや 住みよいやところやいな 娘器量良し 気だて良し

8 きじはケンケン榊の下で (ばば)さんおらんとて さぼとぼとと

9 おらちゃ初めて石場かち習るた 石のそこまでかち習ろた

10 嫁にもらうなら豆腐屋の娘 豆で四角で柔らかい

11 抱いて寝もせずいとまもくれず つなぎ船かよ俺に身は

     よだがり=仕事仕上げの夕方  

 

◆ 輪島市門前町の阿岸川周辺の集落をまとめて阿岸地区という。ここは昭和30年ころまで、新築の家を建てるとき、柱に当たる位置には大きな石を打ち込んで地固めの基礎造りした。この作業はやぐらを組み、直径50センチメートルを超える大きな材木を直立させ、ロープで繋ぎ、大勢の人足がロープを引き、ヨイショヨイショの掛け声で材木を一斉に落として石を打ち込んだ。これは長時間作業となるので、唄を歌いながら打ち込んだという。

現代の新築の基礎は、コンクリートと機械化により、やくらで石を打ち込むことがなくなったが、毎年5月に開催の「阿岸の郷まつり」では、メーン会場となる「本誓寺」の境内で当時の石場かち作業のデモストレーションで再現する。まつりはこれによってクライマックスを迎える。「石場かち唄」はこうして保存・伝承されている。

 

◆ 木造建築の基礎固めは、一昔前までは、柱当たりの地面を強固に堅めなければならなった。その部分に大石、小石を数多く叩き込むのである。5m近くの松の生木を6角柱や8角柱に荒削りして胴突きを構える。胴突きを引き上げる綱は、櫓の滑車を通して大勢の加勢たちの引き綱である。一方根元には根取りが4・5人いて櫓内と外の気合いを合わせ、「石場かち」が勇壮に行われる。このとき大勢いの力や一箇所に集中させるために、なくてはならない唄であった。この唄は、往古総持寺本堂の建立当時から歌い継がれた唄であろう。(合併30周年記念「門前町民謡集」より引用)